無断転貸 パート2

今回紹介する無断転貸のトラブルは、あわや大事件に巻き込まれたかと思ったトラブルです。

入居後間もなく、借主(入居者)が初月の家賃を賃貸借契約には全く関係のない第三者へ誤って振込んだため、家賃が振込まれた第三者から「何のお金だ? なぜ私の口座を知っている?」と弊社へ連絡が入った。弊社は状況を確認するために借主へ連絡を取るもなかなか連絡が取れず、仕方なく借主の健康保険証のコピーに記載されていた借主の職場へ連絡する。しかしその職場の方からは、「〇〇という社員は在職しておりません。」と言う回答があり、不審に思い、連帯保証人である借主の弟にあたる方の職場へも連絡をするが、同じく「〇〇という社員は在職しておりません。」と言う回答だった。

早速、借主の世情を調べるため、まずは借主の前住所(引っ越し前の家)へ足を運んでみた。引っ越したばかりのため、空家であろうと思っていたが、一見最近引っ越してきたようには見えない別の家族が住んでいた。更に不審が高まったため、借主と連帯保証人の住民票と印鑑証明書を区役所へ持って行き、原本かどうかの照合をお願いしたところ、やはり偽造された書類だということが発覚する。公文書偽造である。ここまでくると、借主本人は何らかの目的で名義貸しや成りすまししたことが明らかであるため、すぐに警察へ通報する。

警察は、オレオレ詐欺などの犯罪拠点となっている可能性もあるということで、契約書類などからの指紋採取・鑑定をはじめ、数日間、マンションを外から監視した結果、人の出入りが確認できたということで、警察官7~8名と弊社の社員で現場に踏み込むことになる。しかし現場に踏み込む前日、いきなり借主から弊社にマンションの鍵が送られてくる。添えられた手紙には、ご迷惑をお掛けして申し分けないと書かれていた。

その後、警察官と一緒に現場へ踏み込むも、先にこちらの動きを察知してか、すでに部屋はもぬけの殻の状態。部屋に残されたわずかな残置物から、女性が住んでいた形跡を確認できた(借主は男性)。結局、何のために成りすまし契約をしたのか、その部屋で何が行われていたのか、なぜ第三者の口座情報を保有していたのか、謎は解明されないまま、後は警察に任せることになりました。

借主からの鍵の返却は、オーナー様や弊社にとって不幸中の幸いという結果でした。また現場で何らかの犯罪が行われていたという最悪の結末を避けることもできたため、すぐに鍵を交換して次の入居者の募集もできました。警察に相談してから現地に乗り込むまで1ヶ月以上掛かっていたため、借主はそれに感づいて先手を打ったのではと思います。警察の捜査や行動が早ければ、かなり面倒な事件に巻き込まれていたでしょう。