フリーレント

数年前の不況時には、不動産の賃貸業界でも家賃の相場の値下がりの他に、空室率(全世帯数に占める空部屋の割合)が上昇したということをよく耳にしていました。同時に、不動産会社としてもいろいろな対策を取り、空室率を下げる努力をしておりました。その対策の一つに「フリーレント」という制度が効果的だという噂が広まり、今現在でも「フリーレント」を有効的に活用している不動産会社が多数存在しております。今回のコラムでは、この「フリーレント」について、いろいろな角度から検証してみましょう。

「フリーレント」とは、一定期間のみ家賃を無料にするという制度です。一般的な例では、入居開始当初の1ヶ月分の家賃を無料にするパターンが多くみられます。中には、2ヶ月分以上の家賃を無料にするというお部屋も稀に見かけます。また2年住んでいただけたら2年後に1ヶ月分の家賃を無料にしますという、携帯電話のサービスのような「フリーレント」もあるとか。

それでは「フリーレント」のメリットについて考えてみましょう。実際のお金の動きは、「フリーレント1ヶ月分」とした場合、家賃1ヶ月分の値引きとなりますので、礼金を1ヶ月分値下げしたのと同じ事となります。最近では、礼金無しという条件のお部屋が増えてきたため、礼金を2ヶ月から1ヶ月に又は礼金を1ヶ月からなしと値下げしても、お部屋を探されている方々にはインパクトの薄い値下げとなってきたようです。しかし賃貸借契約締結時の前家賃とは、誰もが支払わなければならない費用です。この前家賃が無料になれば、お部屋を探されている方々は特別なお得感を感じることができるでしょう。また、入居者を早く見つけるための方法として、家賃の値下げする方法もありますが、「フリーレント」とは家賃を下げることではありませんので、長い期間入居者に住んでいただくと、将来的に「フリーレント」による値引き分を回収できてしまいます。

一方、「フリーレント」のデメリットを考えてみましたが、あまり思い当たりません。唯一、デメリットと言えることは、様々な不動産のポータルサイトに物件情報が掲載されているなかで、「フリーレント」という検索キーワードがなく、各物件のコメントや備考欄に「フリーレント」と記載されているため、広告の段階ではあまり目立たないということでしょう。

この「フリーレント」によって1ヶ月早く入居者が決まれば、それだけで元が取れてしまいます。今や賃貸業界では、多少供給過多の状況へと傾きかけているため、少ない借主の争奪戦が始まるものと思われます。賃貸経営の事業者としては、他の入居者募集しているお部屋との差別化を図ることも重要となります。