定期借家契約の落とし穴

リロケーションのような転勤などの理由で自宅を賃貸する場合、今までの分譲賃貸コラムでは、転勤先から戻ってきた時の住まい(賃貸借契約の解約)のことを考え、定期借家契約を利用することが有効的だと述べてきました。その際の家賃や礼金の取得、成約までの時間、契約終了通知の手間などのデメリットについてもご説明してきましたが、実はあまり知られていない定期借家契約の落とし穴についてもご説明しましょう。

仮に、転勤による赴任期間が3年ということで、3年後に明け渡しが保証される3年間の定期借家契約を締結したとしましょう。しかし定期借家契約の締結から2年後、借主側からやむを得ない理由により定期借家契約を解約された場合、残りの1年間をどのように運用・管理するかが大きな問題となります。

なぜ問題になるかと言いますと、1年間という短い期間の定期借家契約では、なかなか借り手が見つからないからです。そして賃貸できたとしても、家賃もかなり安く設定しなければならず、礼金の取得も困難となります。概ね契約期間が2年以内となる場合は、同じリスクがあると考えた方が良いでしょう。

そのため定期借家契約を利用して契約する場合は、事前に契約期間内の解約リスクを充分に理解し、解約に備えるいくつかの選択肢を用意しておきましょう。

〇短期間の定期借家契約

家賃は相当安くなりますが、短い期間での定期借家契約を条件として借主を募集する。

〇空き部屋のまま放置

残りの期間はマンションを空き部屋のまま放置して、家賃収入がないことを覚悟しておく。

〇近所に仮住まい

赴任先から直接自宅へ戻ることを諦め、普通借家契約(一般的に2年契約で更新の拒絶ができない)で賃貸運営し、入居者が退去するまで近所で仮住まいする。

〇立退き交渉(あまりお奨めできない選択肢)

普通借家契約で賃貸運営し、契約の解約(明け渡し)を希望する日の半年以上前から、入居者へ立退き料を支払うことで立ち退いていただくよう交渉をする。

〇売却

赴任先から自宅へ戻ることを諦め、一度身軽になるためにマンションを売却する。一度身軽になれば、次はマンション購入も容易になる。

子供の学校や幼稚園、会社の家賃補助規定、住宅ローン控除の残存期間、その他様々な将来設計などにより対応策は様々です。残り数ヶ月での解約であれば、空き部屋のまま放置することが得策ですが、早期解約のリスクを知っておくことだけでも、いざという時のダメージを軽減できると思います。