一般的な居住用の建物賃貸借契約書では、借主は賃貸物件を無断で第三者へ転貸(又貸し)してはいけないとなっております。しかし今回紹介するトラブルは、分譲賃貸マンションの借主が無断で第三者に転貸し、その転借人(第三者)が賃貸物件内である事業をしていたという、とても厄介なトラブルです。
ある日、近所にお住まいの居住者から、「お宅が管理している部屋の前で、数人の外人が騒いでいる。」とマンション専門プラザへ連絡が入りました。すぐに借主へ連絡したところ、「海外から友人が来ており、数日泊まっている。私は出張中で不在のため、友人には電話で注意しておきます。」と言う。しかし数日後、今度は違う外国人が賃貸物件を出入りしているという連絡が入り、弊社の社員が直接現地へ確認に行く。すると見知らぬ外国人家族が賃貸住宅から出てきて、「日本へ観光に来ており、明日帰国する。」と言う。再度借主へ連絡するが、やはり友人だと言い張る。弊社からは、「たとえ友人とはいえ、あまり不特定多数の友人の出入りは好ましくないため、今後は慎んで欲しい。」と伝える。
しばらくして建物の管理会社から、「お宅で管理している部屋が、ホテルとして宿泊者を募集しているサイトに載っている。」と連絡が入り、すぐに借主へ真相を確認するが、「兄弟が勝手にやったことだから、私はよく分からない。すぐに止めるよう伝える。」と言う。
貸主側は転貸を認めた借主に対し、特別な事情(犯罪や人命などに係る重要なこと)がない限り、すぐに契約解除ができるわけではないと判断し、まずは原状に戻す(借主が自ら居住する通常の姿)ことを強く催促する。それでも原状に戻らなければ、そこで初めて契約解除の請求ができるものと考えたからです。もちろん「〇〇日までに原状に戻せなければ、契約を解除されても構いません。」という念書も書かせています。ホテルとして宿泊者を募集していたサイトからは、すぐに情報が削除されたことは確認したが、その後も近所の居住者の目が光っていたため、少数の外人の出入りが確認された。
結局は、「管理組合から何らかの警告・勧告を突きつけられる前に、あなたから退去された方が良いのでは?」と自主退去を促し、間もなくして無事借主は退去することになりました。居住者の中には、「なぜ賃貸の管理会社は、借主を強制的に退去させないのだ!」とかなりヒステリックになられていた方もいたようですが、お気持ちは分かるものの、借主にも居住権があるのです。約束を守らないからといって、すぐに出て行けとはなりません。
今回の借主とは、数年前に日本に来て、すでに日本を生活の拠点としている外人でした。外人だからといって入居を拒否する行為は、人種差別となります。生活や文化、習慣の違いがあって当たり前ですが、今回は契約違反に対する価値観の違いが招いたトラブルだと思います。
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