民法改正による賃貸取引への影響

今回の民法改正では、判例法理などを明文化して国民にとって分かりやすくする、社会経済の変化への対応、国際的な取引ルールに近づけるなどの目的があり、大陸法系である現民法を当事者の合意を重視する英米法系に近づけるというような改正になっているようです。そのため、今まで民法や関係法令によって定型的に取引きしてきたものが、取引きの双方が1つ1つの内容を確認・合意して定めるという、欧米方式の契約スタイルへと変化していくでしょう。

実際の改正法の施行については、国会で可決され公布されてから概ね3年以内とされておりますので、平成27年中に可決・公布された場合、遅くとも平成30年には施行されることになります。

不動産賃貸取引に与える影響としては、昨今、メディアなどでは「原状回復義務の明文化」という部分のみが報道されていますが、それはほんの一部分となりますので、改めて改正点を説明します。

●原状回復義務の明文化
借主の負担は、「経年変化による損耗は除く」と明記されます。マンション専門プラザが使用する賃貸借契約書では、既にこの条文を明文化しており、また入居者退去の際の原状回復に関しては、国土交通省のガイドラインに沿って費用負担を按分しておりましたので、今までと何ら変わりはありません。

●個人保証の場合の極度額制度
賃貸借契約における保証人が個人の場合、「保証人の債務額に極度額を定める」ことになります。現在の保証人の債務額は、借主が失火した場合や自殺した場合などでも無制限となっていることから、ある一定の極度額(限度額)を定めなければその保証契約の効力が生じないことになります。

●借主の修繕権
「借主は貸主に必要な修繕を要求し、貸主がそれに応じない場合、借主が修繕を行い、必要費として工事代金を貸主に請求できる」ことになります。この場合の借主の修繕とは、貸主の無許可による修繕となりますので、賃貸借契約書には何らかの条文を追加して対策が必要となります。

●自然減額⇒当然減額
「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益することができなくなった場合、賃料はその使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて減額される」となります。例えば、エアコンが故障して数日間エアコンを使用できなくなった場合、その割合によって家賃が当然のように値引きされることになります。この改正に関しても、賃貸借契約書には何らかの条文を追加して対策が必要となります。

その他、動機の錯誤、将来債権の譲渡、敷金の性格の明文化など、直接賃貸取引に影響を及ぼす部分の民法が改正されるようです。特に不動産売買においては、危険負担、瑕疵担保責任、契約不適合の場合の損害賠償責任と代金減額請求、判例法理との相違を解消するために言い回しや用語が変わるものもあります。

現在の民法は1044条まで条項があり、将来は2000条くらいまで増やすとの噂もあります。しかし、私は無法状態である賃貸管理業に関する直接的な法令を作り、早く悪徳管理会社の規制を行って欲しいと願うばかりです。