不動産に纏わる税金の特別控除には、実に様々な控除制度があります。その特別控除を上手く利用するかしないかでは、分譲マンションの一室の売買とはいえ、数百万円単位の税額の違いが出てしまいます。その特別控除制度の中でも一番利用頻度が高く認知度も高いのが、3,000万円の特別控除制度でしょう。譲渡益が出るマンションの売却の場合、この3,000万円の特別控除制度の適用要件を含めて、賃貸と売却の選択を検討するのも大切な要素となります。そしてこの場合、2つの注意点があります。
1つ目の注意点は、オーナーチェンジ売買とお部屋の広さ(間取り)との関係です。ファミリータイプ(2DK以上)の分譲マンションの購入者は、その殆どが自己居住用として購入します。しかしオーナーチェンジ物件は、購入者が自ら居住することができないため、ファミリータイプのオーナーチェンジ物件は、購入者の絶対数が少なく、売値にも影響することがあります。一方、ワンルームや1DKなどの単身者向けのお部屋のオーナーチェンジ物件であれば、投資用として購入する方も多いため、売値は利回りによって単純に計算できます。また賃貸中の物件を空室(自己居住用)の物件として販売するために、お部屋の借主と賃貸借契約を解除してから販売することも可能ですが、賃貸借契約の解除には6ヶ月以上の時間と相当額の立退き料を準備しなければなりませんので、賃貸借契約を解除してまで売却することは、あまりお奨めしておりません。
2つ目の注意点は、譲渡所得に対する税金が発生する場合の売却です。譲渡所得に対する税金の詳細については、国税庁のホームページをご覧下さい。簡単に説明しますと、不動産を売却した時の所得税・住民税は、課税譲渡所得金額に所有期間によって異なる税率を掛けて計算されます。課税譲渡所得金額とは、不動産の売却代金から、取得費用(減価償却費相当額を差し引いた不動産の購入代金・仲介手数料・登記費用・リフォーム費用など)と譲渡費用(仲介手数料・登記費用・リフォーム費用・立退き費用など)を差し引いた金額です。所有期間が5年以下は短期譲渡となり、税率39%(所得税30.63%・住民税9%)、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡となり、税率20%(所得税15.315%・住民税5%)となります。
しかしマイホーム(居住用財産)の売却の場合は、所有期間に関係なく何点かの条件を満たすと「3,000万円の特別控除」を使用することができます。これは譲渡所得から最高3,000万円まで控除できるため、簡単に説明しますと、譲渡益が3,000万円出ても無税となります。そしてこの控除を受ける条件の1つに、譲渡資産に住まなくなった日から3年後の年末までに譲渡するという条件があります。つまり住んでいたマンションから引っ越し、マンションを賃貸するしないに関係なく、引っ越ししてから3年後の年末までに売却すれば3,000万円の特別控除を受けることができるということです。
譲渡益が出て所得税が掛かるような場合には、3,000万円の特別控除を受けるために賃貸ではなく売却を検討する、又は 3年以内の定期借家契約で賃貸することをお奨めしております。
例)売却代金5,000万円、取得費用2,800万円、譲渡費用200万円とした場合
課税譲渡所得金額=売却代金5,000万円-(取得費用2,800万円+譲渡費用200万円)=2,000万円
●所有期間5年以下の場合(短期譲渡)
○3,000万円の特別控除を使用すると、税金は0円。
○3,000万円の特別控除を使用しないと、譲渡所得に対する所得税・住民税は合計792.6万円
所得税=課税譲渡所得金額2,000万円×短期譲渡の所得税率30%=600万円
復興特別所得税=所得税×復興特別所得税率2.1%=12.6万円
課税譲渡所得金額2,000万円×短期譲渡の住民税率9%=住民税180万円
●所有期間5年超の場合(長期譲渡)
○3,000万円の特別控除を使用すると、税金は0円。
○3,000万円の特別控除を使用しないと、譲渡所得に対する所得税・住民税は合計406.3万円
所得税=課税譲渡所得金額2,000万円×短期譲渡の所得税率15%=300万円
復興特別所得税=所得税×復興特別所得税率2.1%=6.3万円
課税譲渡所得金額2,000万円×短期譲渡の住民税率5%=住民税100万円