立退き交渉の現実

『アパートの大家さんと分譲賃貸の大家さんの違い』のコラムでもご説明した、分譲賃貸マンションの特徴の一つである、「貸主側からの賃貸借契約の途中解約や更新の拒絶」について、実際の現場ではどのようにして立退き料が決まっているのか、その現実をご説明します。

 

まずはなぜ貸主が「賃貸借契約の途中解約や更新の拒絶」をすることができないのかを再度ご説明します。一般的な住宅賃貸借契約を締結している場合、貸主側から契約の途中解約や更新の拒絶をするには、借主の居住権保護の観点から、正当事由が必要とされています。正当事由とは、貸主の建物の使用を必要とする事情や賃貸借に関する従前の経緯、建物の利用状況、そして立退き料の提供などを考慮して判断されます。そのため立退き料の金額に関しては、貸主及び借主の様々な事情に照らし合わせ、話し合いによって決まります。

 

賃貸借契約の解約に対する立退き料は、概ね以下のように計算されます(弊社計算方式を参照)。最大で家賃の7~8ヶ月分を立退き料とすることも考えられますが、これに貸主及び借主の様々な事情に照らし合わせ、最終的な立退き料が決定します。

 

〇借主の新居の賃貸借契約に掛かる経費…家賃の約3~4ヶ月分

(礼金・仲介手数料・賃貸保証料・その他経費)

〇引越代…家賃の1~2ヶ月分

〇迷惑料…家賃の1~2ヶ月分

 

まずは貸主の様々な事情を、具体例でご説明します。貸主が転勤の赴任先から戻ってくることになったため、賃貸しているお部屋を借主に明け渡して欲しいという場合、どのように立退き料が決まるのでしょうか? 転勤の赴任先から戻ってくるためという解約理由は、一般的に正当性に欠けていると判断されます。そのため正当事由として欠ける部分を立退き料の提供によって補います。転勤先から戻ってくる場合の契約解除は、概ね家賃の3~6ヶ月分の立退き料が相場となります。

 

では高く売れるこの時期にマンションを売りたいため、賃貸しているお部屋を明け渡して欲しいという場合ではどうでしょうか? この解約理由は貸主の一方的な自己都合によるものであり、正当性は極めて低いと考えられます。そのため立退き料の相場は最低6ヶ月以上が当たり前となります。実際にこのようなケースでは、賃貸借契約を解除せずに、オーナーチェンジ物件として販売するケースの方が圧倒的に多くなります。

 

貸主の正当事由が概ね認められるケースとして多いのは、貸主の住宅ローンや税金の支払いが滞納しているため売却する、棟内に住む両親の介護をするために明け渡して欲しい等、限られたものとなります。

 

次に借主の様々な事情とは、どのような事情があるのでしょうか? 例えば、小学生のお子様がおり転校が絡む、重い病気を患っており近所の病院に通院している、近所に住む両親の介護を行っている等となります。また近所にお部屋を借りることができれば良いのですが、その保証はなく、また引越し先を近所という狭いエリアに限定することによって、お部屋の希望条件を大幅に妥協しなければならなくなります。

 

このように貸主の事情だけではなく、借主の事情も踏まえ、話し合いによって立退き料が決まりますが、話し合いで解決しない場合は、最悪、法の場を利用して決着ということも考えられます。その他、気をつけなければならないことは、貸主側から「賃貸借契約の途中解約や更新の拒絶」をしようとする場合は、半年以上前に借主へ申し出る必要があります。

 

マンション専門プラザでは、転勤などの理由で賃貸(リロケーション)するオーナー様には、事前に定期借家契約をお奨めしており、貸主・借主双方が嫌な思いをせず、無駄な経費を払わず、安心して賃貸できる(借主は安心して居住できる)よう、適切なアドバイスをしております。その結果、弊社の立退き交渉の案件は激減しており、最近では殆ど立退き交渉の案件はありません。

 

今後、立退き交渉をするというオーナー様におかれましては、立退き料は家賃の3~8ヶ月分を見積もっておくべきです。最後に、我々賃貸管理会社が一番嫌な管理業務が、この立退き交渉です。お互いの生活の事情に挟まれ、とても精神的にタフな交渉となるからです。