国土交通省の原状回復ガイドライン

お部屋を賃貸した場合、入居者が退去した時の原状回復で入居者とトラブルになるという話をよく耳にします。そしてそのトラブルを検証すると、代表的なトラブルの原因が3つ上がってきます。

●「原状回復」の認識の違い
原状回復とは、建物の通常損耗分を元の状態に回復することではなく、借主の故意・過失等による劣化の回復を意味するものです。入居者が通常の生活を行う上で生じた小さな傷や汚れなどは、原状回復の対象外となります。トラブルとなっているオーナー様は、貸した時と同じ状態でお部屋が返ってくるという誤った認識から、借主に対し法外な原状回復費用を請求したことによりトラブルとなっています。

●借主の無断ペット飼育
室内で躾けができていないペットを飼うと、床や壁の傷・汚れだけではなく、尿の臭いがクロスや畳にまで染み込む、柱や建具に引っかき傷が付くなど、これを原状回復するには多額の費用が掛かります。借主は原状回復費用を数万円程度と考えて、契約違反を承知の上でペットを飼育していることが多く、その借主に対して数十万円の原状回復費用を請求するのですから、トラブルになるのは必至です。そして契約違反者に対しては、毅然とした態度でその責めを追及するしかなく、考えの甘い借主からは一言二言の言い訳や文句は当たり前となります。

●賃貸開始時点のお部屋の確認不足
入居者退去時のお部屋の確認で発見された大きな傷や目立つ汚れは、入居時に無かったものであれば原状回復の対象としてその責めを借主へ追求できます。しかし入居者は、「その傷は入居時からあった傷だ」という主張をされることが多く、その嘘を暴くためには、入居時のお部屋の状態を写真などで記録しておかなければなりません。

原状回復の費用負担のあり方については、賃貸住宅取引きの指針として平成10年3月に国土交通省がガイドラインとして取りまとめた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をベースに考えます。詳しくは国土交通省のホームページでも確認できますが、賃貸中の経年劣化・通常損耗は原状回復の対象外という当然の考え方が国の機関で取りまとめられたことから、トラブルの数はかなり減ったものと思われます。